The Outcasts(読切り短編)11~20

第11話~第20話まで

The Outcasts・20-4

そしてオオムラは僕に、
会話の中からも客を判断することを教えてくれた。

その客と会話をしていく上で、相手の発言の中に
警戒しなければならない発言というものがあるのだ。

「いいか、新規で来て
いきなり営業時間や店の電話番号を聞かれたら気をつけろ」

オオムラは僕がある新規客の受付をした後で
僕にそう言った。

「まぁデコスケ(刑事)じゃないだろうけどな、
そんなこと聞いてどうするんだ?ってことだ。
ちょっと気の利いた人間なら携帯だって持ってる時代だ。
店の電話番号なんか聞いたってかけないだろ?」

そして別の機会には、こんなことも言った。

「サービスはいくら出るんだとかさ、
そういうこと言う客にいい客なんかいないよ。

どんなに身なりが良くても、高級品を身につけていても、
この質問されるとがっかりしちゃうよな。

本当に良い客ってさ、サービスなんか気にしないし、
仮に良い客だったらこっちだって次につながるように
キチンとサービスするんだから。
わざわざ聞くだけ野暮ってもんだろ。

大体さ、こういう質問をする客ってまず間違いなくガジリだよ。
負けたから車代寄越せとか、特別サービスを出せとか言い出すのも
こういうタイプ。誰が出すかよってんだ」

そんなオオムラに僕は、
ちょっと小耳に挟んだ程度の知識を披露してみる。

「でも海外のカジノなんかは
負けた客には後からいろいろサービス出るじゃないですか?
部屋をスイートにしてくれたり、シャンパン付いてきたり」

「ま、あっちは全員に平等なお買い上げに対するサービスなんて
ほとんど出してないからさ。あくまで遊んでからの話だろ?
ああいうコンプってのはそういうもんなんだ」

「日本もそうすればいいじゃないですか?」

「そりゃ出来ればそうするのがいいんだろうけど
そのためには客の管理ってのがもっときっちり出来ないと。
ま、おいおいそういう管理の必要性は出てくるだろう。
これだけガジリが増えてきちゃったら、
客見てサービス決めないと店が持たないし」

当時の僕はそう聞いて頷くだけだったけれど、
(当時の僕は、控除率と言う概念さえ怪しいものだったのだ)
ある日、オオムラ自身の接客を間近に見て
僕はまた新たな知識を身に付けることになった。

それは30代から40代にかけての新規の客だった。
どことなく崩れた雰囲気を身にまとったその男は、
店に入ってくるなり店の内部や従業員をじろじろと眺め回した。

僕はかつて教わったように、ウェイトレスからお絞りを取って
それを自分で渡しながら対応しようと男に近づいた。

男はそれを受け取るだけ受け取って、
使いもせずにテーブルの上に放り
小馬鹿にしたような口調で僕に言った。

「ここは誰がやってんの?会長?」

会長、などと呼ばれる人物には僕はまるで心当たりが無かった。
その店のオーナー自体、僕はあまり良く知らなかったのだ。

一度だけオオムラに頼まれて
近所の焼肉屋に荷物を届けたことがあったけれど
その時に同席していた相手に
オオムラが僕を敬語で紹介してくれたのを聞いて
この人がオオムラの上の人なのかと思っただけだった。

「いや・・ちょっとそういうのは・・」

口ごもる僕に、その男は見下すような口調で

「ふん。ナンだ、一見には言えないってか。
で?ケツはどこに持ってもらってんの?D組?K連合?」

ケツ持ちの話を出されて、僕は瞬間的に緊張する。
そんなことを聞く客など今までいなかった。

と、そこへオオムラがすっと寄ってくる。

「お客様、それが何か?
聞かなきゃ出来ないと仰るのでしたら、
お引取りいただくしかなくなっちゃうんですけど。
それともお客様とは代紋の話になるんですか?」

若干キツめのオオムラの口調を聞いて
僕は少し緊張を覚える。

その客に、オオムラが僕よりも上の立場であることは
すぐに分かったようだった。
男は、ちょっと慌てたような、弁解じみた口調で

「ん、いや。このハコは前は会長がやってたハコだからさ。
同じ系列の店なのかと思ってさ」

と言いながら、僕が持っていた会員規約書を指差して

「で、これ書けばいいんだろ?
大丈夫だよ、不良じゃねぇから」

と言った。オオムラは男の顔をしばらく見つめた後、僕に

「じゃこちら一旦目を通していただいてから
お名前をフルネームでいただいて」

と言って男から離れた。

男がゲームを始めると、
オオムラは、少し離れた場所からそれを見つめる僕の隣に来て

「ま、ああいうことは普通の客も本物も絶対に聞かないからな。
聞く時点で半端者だって言ってるようなもんさ。
聞いたって言うわけ無いのにな。

多いんだよ、でも。ああいうの。

事情通を気取りたいのかもしれんけど、ろくな奴じゃないからな。
無用のトラブルのもとになるだけだから、断ろうかと思ったよ。

すぐにケツ呼べ!とか俺はオーナー知ってんだぞ!とか
ガタクるのもこういうタイプだしな。
ま、一応打たせてはみるけど、要注意だからな」

と小声で言った。
僕はそれを聞いて、観察して分かる部分だけでなく、
こういう会話からも判断できることもあるんだと思いながら
署名してもらった同意書を元に、会員カルテを作成した。

カルテには、名前、会員番号の他に
外見的特徴や注意点を記入することになっていた。

推定年齢、髪型、体型、指輪やピアスなどのアクセサリー、
紹介者、誰と知り合いだったか等だ。
似ている芸能人なんかがいれば、それも書く。
あまりにもマイナーな芸能人だと分からないから
ある程度の知名度がある芸能人に限られていたけれど。

もちろんこういう要注意の客には、
店内で共通の要注意マークをつける。

それから僕は、自分用の手帳に
同じように顧客メモを記入した。

そちらには、平均ベットやランク分けなども記入していた。
オオムラにそうした方が便利だと言われたのだ。

忙しい時などは、この作業は決して楽ではなかったけれど、
客を早く覚えて適切な対応をするためには非常に有効でだった。
吸っている煙草、コーヒーの砂糖やミルクの有無、
車で来ているかタクシーか電車か、誰と仲良くしているか、
細かく書けば書くほど効果は大きくなるのだ。

例えば、数回目の来店だけれど大事にしたい客に

「煙草ちょうだい」

と言われた時に何も言わずに
今まで来た時に吸っていた煙草を持って行くのと、

「お煙草は銘柄は何でしょうか?」

といちいち聞き返すのではどちらが印象が良いかと考えれば
その意味は僕にも十分理解できた。

もちろん前回吸っていた煙草を替えている事もある。
けれどその時に客から

「あ、コレじゃなくて△△ちょうだい」

と言われたら、

「あれ?以前いらした時は○○吸ってらっしゃいましたよね。
お煙草替えられたんですか?」

などとコミュニケーションを取るために利用できる。
そのコミュニケーションによって客も

「あ、覚えててくれてるんだ」

と思ってくれるかもしれない。

あるいは

「○○様いらっしゃいませ」

と名前をすぐ呼んで席に案内するのと、

「お名前頂戴できますか?」

と言うのではどちらが好印象だろうか。

客全員にすることは難しくても、
リストが多ければ多いほど良いわけだし、
大事にしたい客ならそれくらいは出来ないと、という話なのだ。

オオムラが一つ一つの意味までも教えてくれたわけではなかったが
僕は自分なりに考えて、そして自分なりの工夫を重ねていった。
僕のアンダーグラウンドの世界での基本的な姿勢は
オオムラの影響を強く受けていると言っても良かった。

けれど、残念ながら、オオムラと僕の関係は
2年ほどで終わりを告げた。
この世界の常ではあるけれど
流行っている店はそれだけ目立っているからか、摘発されやすい。

僕もオオムラも非番の日だったけれど
店の名義人であるオオムラは逃げるわけには行かない。
いろいろと後始末の算段を終えてから
オオムラは警察に出頭した。
驚いたことに、僕の再就職先まで見つけてくれていた。

僕は紹介された先で、末端の黒服で働き始め
わずか半年後には責任者になった。

「最近入ったあいつ使えるじゃないか」

たまたま店に来ていたオーナーが僕の仕事ぶりを見て
店長にそう言ってくれたのだということだった。

僕は何がそんなに評価されたのか分からなかったけれど
オオムラに教わったことが、本当にどこに移っても使えるということに
いつしか気づくことになった。

客商売において、どんなに単価が小さな客でも、
覚えてくれていて接客されるのは悪い気分ではない。

そういう「ちょっとした好印象」が
店に固定の客が増える一つの要因だし、
何かあった時に店の味方をしてくれることにつながったりもする。
軽視することはできないのだ。

実のところ、オオムラの店では、
僕の給料はそれほど良くはならなかった。
僕よりも年長の黒服が多かったせいか
ずっと横並びの給料のままだった。

でも、オオムラがイロハから教え込んだのは
おそらく、僕だけだったと思う。

その無形の財産のおかげで
僕はその後十年以上、この世界で凌ぐことになったばかりか
さらに、その後もこうして記事まで書いているわけだ。

さすがにそれは、金には換算できないだろう。
たとえ、金が全ての、アンダーグラウンドの住人であっても。

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The Outcasts・20-3

「お前がこの先どこの店に行っても食っていけるように
俺の知ってることは教えておく」

オオムラはそう言って、僕に様々なことを教えてくれた。
客の嗜好や外見的特徴を手帳にメモするようになったのも
オオムラにそう言われたからだ。

「カジノがこれだけあるんだから
自分とこを選んでもらえるようにしないと。
そのためには客をしっかり捕まえるんだ」

もちろん言葉にして教えてもらうことばかりではなかった。
僕が失敗した尻拭いをしてから
どうすれば良かったのか考えさせられることも多かった。

「人はまず見かけで判断しろ」

僕がうっかりやくざ者を店に入れてしまった時、
オオムラはそのやくざ者を断ってから
モニターの画面を見ながら、そう言った。

「服装や持ち物にはな、そいつの人間性が出るんだ。
例えば歌舞伎町みたいな繁華街で
ジャージやサンダルでカジノに来る人間は、
間違いなく普通の仕事なんかしてないんだから。
大体ヤクザか金貸し、水商売だろう。
スーツだって堅気とそうじゃない人間の着方には違いがあるんだ」

「どこに手がかりを見つければいいんですか?」

人を見る目などまるで持ち合わせていなかった当時の僕は
そう愚痴をこぼした。

「見ろ、とにかく見るんだ。
指の欠損は無いか、言葉遣いはどうか、
腕や首筋から刺青が見えないか集中して見るしかないんだ。

夏に長袖を着ているには理由があるはずだ。
ポケットに手を突っ込んでいるのにも、理由があるかもしれない。

だったらどうすればいい?

俺ならゴミでも拾うふりしてしゃがみこむね。
上からだったら見えなくても下からなら見えるかもしれない。
靴だってヤクザとサラリーマンじゃ違うだろ。

指が見たければ片手を使っている時にお絞りを差し出して見る。
規約書にサインさせる時なら両手を出すだろう。
その時の字の書き方はどうだった?
丁寧な字か?適当に書き殴ってたか?
そんなところにもそいつの人間性は出るもんだ」

僕はオオムラの言うことを
すぐに実践できたわけではなかったが
それでもその意図については十分に理解できた。

オオムラの教育は、客が遊んでいる時にも行われた。
僕がテーブルから少し離れたところから見ていると
オオムラが小声で僕を呼んだ。

「あの5番の客がはめている時計見たか?
ヴァセロンの時計してるだろ?
もしかしたら結構いい客になるかも知れんぞ。

博打に使うかどうかは別にしたって
ヴァセロンの時計なんか質屋は扱わないからね。
中古で買うような時計じゃないんだ」

「どうしてですか?」

僕は尋ねた。時計などにほとんど関心が無い僕は
オオムラの言っていることを理解できなかった。

「ま、時計なんかもある程度の知識は必要なんだけどな。
ロレックスは知ってるだろ?中古の市場で流通する高級時計ってのは
大半がロレックスなんだ。モノによっちゃプレミアまでつく。
ってことは、あぶく銭で買っておけばいざって時にそれを換金できる。

逆にヴァセロンだのパシャだのっていう宝飾時計は
買うなら新品を買うものなんだ。
ホントの金持ちはリセールしようなんて思わないからな」

なるほどなと感心するだけだった僕をよそに
オオムラはシュートの合間にその客に言葉巧みに話しかけ、
その客はその後およそ2年の間、店の中で1,2を争う上客になった。
しばらく後で宝石屋のチェーンを持っている会社の
オーナー社長であることがわかったけれど、
もちろん聞き出したのはオオムラだった。

バッグは何か?財布は?
アクセサリーは何を着けている?
スーツのネームは?柄は?素材は?

とにかく見るしかないんだ。
それが俺たちの商売なんだ・・

オオムラはことあるごとに、時にはクイズのようにして
僕に見るべきチェックポイントを教えてくれた。

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The Outcasts・20-2

オオムラに誘われて移った新店で、
僕はがむしゃらに働き続けた。
そして良くない遊びを覚え、嵌まり、己の博才を勘違いしかけた。

それでも、僕はいつしか、少しだけでも金を残そうと
少しずつ生活のあり方を変えた。

それもオオムラの一言が一つの契機だった。

「お前な、遊ぶのもいいけど
それじゃこの先何にも残らないぞ」

正直に告白すると、それをそのまま聞き入れるほど
当時の僕は賢明では無かったけれど
その一言は僕の耳にずっと残り続け、
僕はある時の大敗をきっかけにきっぱりと博打を止めた。

オオムラの一言の意味がやっと分かった瞬間だった。

そしてある日、僕らがもともといた一号店が摘発された。

実は、より摘発されそうだと噂されていたのは二号店の方だった。
一号店に残ったディーラーから

「お前んとこ、寒いんだって?
馬鹿だな、こっちに残っとけば良かったのに」

などと言われていた僕がオオムラに

「この店、寒いんですか?」

と尋ねた時にオオムラが

「寒いか寒くないかだったらそりゃ寒いさ。
でも寒くない店なんてあるのか?
腹くくらにゃどうしようもないだろ」

と言っていたのを僕は思い出した。

「あのまま居続けてたら俺も持ってかれてたんだな・・」

そう考えると、少し不思議な気分だったけれど
現実として僕がやらなければならなかったのは
一号店の摘発のせいで閉店を余儀なくされた二号店の
冷蔵庫の牛乳や生鮮食品をオオムラと残らず廃棄することだった。

そして、その日から僕は職を失った。

とはいえ蓄えはいくらかあったから、
すぐに生活に困ることは無かったし
ディーラーの仕事の話など、いくらでもある時代だった。
数人の知り合いに声をかけただけで
びっくりするくらいの求人があふれていた。

そんな時に、僕はオオムラからまた誘われた。
ヘルプ扱いで長くても3ヶ月くらいしか働けない話だったけれど、
僕の住まいからはさらに不便な街だったけれど
僕はほぼ即決でその店に行くことに決めた。

「その後は俺が自分で店を出すつもりなんだ。
もうオーナーもいるし、準備には少しずつ入ってるから」

それは、今にして思えばずいぶん心もとない話だったが
僕はそれを頭から信じて、

「その時にはまた手伝いますよ」

などと言っていた。

使えるディーラーというものが不足していた時代で
完全な売り手市場であることを僕は十分に理解していた。
だから、オオムラが本当に店を開けるなら
ディーラーの確保が大きなネックになるであろうことも
当時の僕には分かっていたのだ。

果たして3ヵ月後、オオムラは歌舞伎町で店を出した。
ヘルプを辞めて移ろうとした僕を巡って
オオムラとヘルプ先の間でちょっとした揉め事になった結果、
僕は開店直前までヘルプを続ける羽目になったけれど
僕はその店で黒服をすることになった。

「そんなにいい金は出せない。
でも、当てに出来る人間があんまりいないんだ」

そう言って頭を下げたオオムラに僕は何も言わなかった。
確かに、もっといい条件はいくらでもあったけれど
僕にとってはそれはあまり大きな問題では無かったのだ。

その代わり、というわけではなかっただろうが
オオムラは僕に黒服の基礎を叩きこんでくれた。

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The Outcasts・20

日本のアングラカジノにおいては、
黒服はピットクルーとしての働きのみならず、
セキュリティも営業も兼ねなければならない。
シキテンという見張り役を置いていることも多いが
シキテンはあくまで店の外の部分しか見られない。
店の中のことに関しては、黒服が見ざるを得ないのだ。

もちろん全ての黒服が何でもこなせるわけではない。

ピットクルーとしての仕事しか出来ないという者も多い。
客の出す金を受け取りチップを渡す、あるいは逆にチップを金に換える。
やること自体は誰でも出来るような仕事だ。

そもそもそれほど有能な人材が入ってくる業界ではない。
彼らのほぼ全員が、金のためにやっている。
僕ももちろんその中の一人だった。

人はパンのみのために生くるにあらず・・

そんな文句とは裏腹に、この世界では
仕事は「パン」のみのためになされる。
誇りも、向上心も、遣り甲斐も、無い。

そんな連中が集まる世界で
努力や研究、日々の積み重ねが求められる業務を彼らに求めても
砂を噛むような思いをする羽目になるだけだ。

だからちょっと気の利く人間がいれば
その人物を見込んでいろいろと教え込むようになる。
誰彼構わず教えたところであまり効果は無いのだ。

問題はそういった人間にも
あるいは箸にも棒にもかからないような人間にも
同じような金しか出せない、というところにある。

能力のある者に金を出すのは可能なのだが
それを納得するような人間も少ない。
もともと金目当てで集まっている分、
自分よりも多くもらっている人間への嫉妬の感情は激しい。

足を引っ張り、陥れ、場合によっては客と組んで不正に走る。
獅子身中の虫と言うか、身内に敵を作るようなものだから
それを防ごうと思えば横並びにせざるを得なくなる。
そして今度は有能な人材の方に不満が蓄積していって
やがては貴重な人材を失っていくことになるのだ。

ただ、それを超えて結びつく人間関係も少ないながらも存在する。

「この人だったらついていこう」

そんな感情を下の人間に抱かせる器量の持ち主もいる。
僕にとっては、オオムラがそういう人物だった。

オオムラは最初、僕が研修生として入った店の責任者だった。
僕よりも10歳ほど年上だったろうか。
いささか過酷過ぎるようにも思えるルーレットの研修を終えて
ようやくカードゲームのディールを教わり始めた時に
僕らにそれを教えてくれたのがオオムラだった。

研修の合間にオオムラの話すアンダーグラウンドの世界のエピソードに
僕は不安と楽しみが入り混じった不思議な感情を覚えた。
この世界に自分はいつまでいて、どんな生活を送るのだろう・・
そんなことを漠然と考えたりもした。

実のところ、オオムラの教え方は大雑把で、
他の研修生にとっては決して良いコーチではなかったようだが
僕は不思議とオオムラと馬が合った。
おそらくオオムラも目をかけてくれていたと思う。

そして、二号店を出すという話が決まった時に
オオムラは店長に昇格という形で二号店に移ることになった。

新店舗を出す時には良くあることだが
店長等の幹部にとって使いやすい人間を何人か連れて行くことがある。
自分の手足となって動いてくれる人間がいないと
軌道に乗せるどころの話では無くなる。。
組織固めという意味合いにおいては当然のことでもある。

そしてオオムラが連れていこうとして選んだうちの一人に
ディーラーになって数ヶ月の僕が含まれていたのだ。

「お前はオーナーのお気に入りだしな。
それに俺は体育会系の人間だからさ、そういうのを選んだんだ」

冗談なのか本気なのか分からないようなことを言って
オオムラは新店に僕を誘った。
当時の僕の住んでいたところからは少し不便な場所だったのだけれど
僕はほとんど迷うことなく承諾した。

まだ、世の中がバブルの狂乱に明け暮れている時代だった。


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The Outcasts(読切り短編)11~20 |

The Outcasts 外伝・Shang-hai Honey・4

僕がクルミを放っておけなかった理由。

それはもちろん彼女のルックスもあったかもしれない。
可愛い子が堕ちていくのを見たい人間は少ない。
少なくとも、僕にはそういう趣味は無い。

一番の理由は、彼女の年齢だった。

クルミは僕の半分ほどの年齢と書いたが
年齢差で言えば、16歳離れていた。

僕はふと、16年前を思い起こし、
それが僕がアンダーグラウンドの世界に
足を踏み入れた年齢であることに気付き、
その当時、クルミが6歳で、
僕の娘の年齢であることに気付いたのだ。

僕がこの世界に入った頃、この子は小学1年生か・・

そう思うと、僕は娘がクルミの年齢になった時に
思いを馳せないわけにはいかなかった。
周りに、お節介を焼いてくれる存在がいることが
もしかしたら幸せなのかもしれないと思ったのだ。

君がやっている芸能関係の仕事も
アングラの世界でパクられちゃえば台無しなんだよ。

何も知らない相手に長々とそんな返事を寄越されたクルミが
どう思ったかは僕には知る由も無い。

けれど、結果として、クルミはアンダーグラウンドの世界を覗くことなく
程なくしてアミューズメントカジノの仕事を辞め、
プロフィールから顔写真を削除した。

この短編は「Outcast」を描いたものだけれど
そういう意味では、クルミは「Outcast」ではない。
外伝にしたのはそういう理由からだ。

その後しばらくの間、僕とクルミはweb上の遣り取りだけを続けた。
クルミは上海に留学することになったのだけれど
webの上のことだから、どこに住んでいようと関係は無かった。

僕は僕の書きたいことを書き、クルミはそれを読む。
クルミも上海での出来事などを書き、僕がそれを読む。
そんな関係がしばらく続いた。

クルミの記事に着くコメントが
どうも彼女を偶像化して賞賛するかのようなものが多いことには
ちょっとした違和感を覚えざるを得なかったけれど、
そういったコメント主を僕が現実に知っているわけではないから
それはもしかしたら僕の考えすぎだったのかもしれない。

けれどある日、クルミは忽然とwebの上から消えた。

ごく普通の生活をしている彼女の身の上に、
特に事件があったわけではないだろう。
摘発や破滅が賭けられるような生活ではない。

ひょっとしたら、プロフィールの画像を変えただけで
IDをそのままにしていたクルミに、かつての画像の記憶を元に
しつこく言い寄った人間もいるかもしれないが
その手のあしらいには慣れているのではないかとも思う。

まして今更アンダーグラウンドの世界に
足を踏み入れる気になったわけでも無いだろう。

たぶん、あの年代の女の子にありがちなように
クルミは飽きただけなのだろう。

ただ、僕は少しだけ気になっているのだ。

アカウントごと削除してしまいたくなるほど嫌なことが
クルミに降りかかっていはしないかと。
一瞬すれ違っただけに過ぎない僕が
心配するようなことではないのだけれど。

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The Outcasts 外伝・Shang-hai Honey・3

SNSというメディアを、出会い系のように使う者は多い。
定かではないけれど、専門の業者の数も相当多いだろう。
顔を合わせずに済む分、軽い気持ちで声をかける割合は
むしろ通常の世界よりも多いかもしれない。

僕はそれを必ずしも悪だとは言わない。

健康な男女が、異性に出会うことを求めるのは
自然なことであり、当然のことでもある。

若くて可愛い女の子がいれば
声をかけるのは男として礼儀だという価値観だって
世の中には歴然と存在する。

まして、加入しているコミュニティがカジノ関係で
アミューズメントカジノで働いていることを公言しているのだ。

カジノ業界の人間の男女関係の希薄さを考えれば
彼女にどれくらいのアプローチがあるか、想像に難くない。
そして、彼らにとって都合の良いことに
彼女はカジノの世界に興味があるのだ。

「こんな遊びじゃなくて、真剣勝負しにいこうよ」
「若いうちは社会勉強しなくちゃ」
「俺の顔が利く店に連れてってあげるよ」

メッセージで、コメントで、あるいはクルミの働く店で
そんな誘い文句が投げかけられているのが目に浮かぶようだ。

それにどう対応するかは、彼女の問題だが、
結果にはいくつかの類型があるだろう。

何事も無く、ちょっとしたスリルを楽しんで
カジノとも、相手とも程よい距離を保っていけるかもしれない。

最初はチビチビと遊んでいたのが
張る金額はどんどん大きくなり
最初は誰かと一緒でなければ行けなかったのが
一人でも行くようになってしまうかもしれない。

もしかしたら、イカサマに嵌められて、有り金どころか
巨額の借金を作ってしまうかもしれない。
場合によっては、水商売や風俗へ沈められるかもしれない。
クルミには、間違いなく「値が付く」はずだ。

アングラの世界で働くようになって
やがてどこかの店で摘発されて
ベントウ(執行猶予のことだ)でも貰うかもしれない。

相手の人間性が信頼できるかどうかも分からないし
仮に信頼できたとしても、相手も嵌められているかもしれない。
金か体のどちらかを、あるいはその両方を目当てにしていないなどと
一体誰に言えるというのだ。

クルミにカジノの世界の住人の本質が見抜けるとも思えなかったし、
イカサマに気付けるとも思えなかった。
彼女の自制心がどれくらいのものかなんて、分かるはずもなかった。

とは言え通常、僕はそういったケースではまず口を挟まない。
何も言わないし、止めようとも思わない。

クルミは自分の責任において顔を載せ、
自分の責任においてSNSをやりコミュニティに入って、
自分の責任において仕事をし、人間関係を作った。

僕などが何を言ったところで
堕ちる人間は堕ちていくし、
僕にはいちいち気にするほどの暇も甲斐性も無い。

クルミが望んだ結果になるかもしれないし
クルミはそれで幸せになるのかもしれない。

僕の知ったことではないのだ。

にもかかわらず、僕は言葉を尽くして
クルミにそのことを延々と説いた。

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The Outcasts 外伝・Shang-hai Honey・2

アンダーグラウンドの世界に興味を示したクルミに対して
僕が感じた危惧。

それはクルミ自身の問題だった。

クルミはSNSのプロフィール欄に、
どこかで撮った自分のプリクラを載せていた。
そして、同じ欄にリンクを張った自分のブログで
ちょっとした芸能活動をしていることも明かしていた。

モデルかタレントか・・、それは僕には分からない。
けれど、そこに載っていた彼女のルックスは
確かにそういった活動をしていてもおかしくないレベルだった。

ショートカットの黒い髪、大きな瞳、白い肌・・
美少女というよりはチャーミングな小動物のようなクルミが
若い頃の僕の目の前にいたら
僕はドキドキして話すことも出来なかったかもしれない。

もちろん現実には、
クルミと僕は無機質なweb空間で繋がっているだけだし
僕はそこまでウブな少年でもない。

第一相手が誰であろうと、
ドキドキして言葉に詰まったら、
パソコンの前を一旦離れて
洗面所で顔でも洗ってくれば済むだけの話だ。

けれど、クルミがSNSとは言え巨大な世界で顔を晒し、
カジノをテーマとするいくつかのコミュニティに加入し、
自分の店にやってくる何人かの客と
フレンドリンクを張っていることに
僕は少なからず懸念を抱いた。

もちろん、それ自体はどれも悪いことではない。
そのことによって、世界が広がることもあるだろう。
クルミだけでなく、僕も、誰もがそうしている。
それがSNSの魅力であり、意義なのだ。

一方で、クルミの個人的な条件を考えれば
そのことによって、彼女がある種の煩わしさを背負うのも
ある意味においては必然だ。

クルミが望むと望まないとにかかわらず。

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The Outcasts 外伝・Shang-hai Honey

最初にコンタクトを取ってきたのは彼女の方だった。
名前を・・・クルミとしよう。

アミューズメントカジノ、つまり、金銭を賭けない、
単なる遊技場としてのカジノで働いていると言うクルミは
どこかで僕の書く文章の存在を聞いたらしく
僕が入っていたSNSに簡単なメッセージを送ってきた。

メッセージを貰ってから、クルミのプロフィール欄を見にいくと、
クルミはまだ僕の半分ほどの年齢だった。
何でも、留学費用を稼ぎたくてアルバイトをしているのだと言う。
かつての僕と全く同じ動機だ。

カジノに存在するギャンブルの面白さに対して
若者らしい好奇心をあけすけに語っていたのだが、
それと同時に、僕がかつて属していた
アンダーグラウンドの世界に対しても多少の興味を持っていたようで
僕としてはまずそれを思い止まらせることを念頭に置きながら
クルミに対して返事を書いた。

アミューズメントカジノとアングラカジノでは
同じディーラーをやっていても
収入はおそらく2倍以上違うだろう。

そして、単なるゲームとしてディールしていくうちに
本気の客を相手に、本気のディールをしてみたいと思うようになる。
あるいは、自分でも本気で勝負を味わいたくなる。
これはどんな人間でも思うことだ。

料理でも武道でも、球技でも、
ママゴトをしているうちに、本物を味わいたくなる。
むしろ健全な好奇心を持っていればいるほど
そういう傾向は強いかもしれない。

けれど、カジノに関して言うのであれば
そちら側に踏み込んでしまえば
元の世界に戻るのは、そう簡単なことではない。

人は、目的が明確であればあるほど
それを実現させるための期間は短くしたいものだ。
であれば、より収入の良い仕事があれば
そちらに惹かれるのはむしろ当然ですらある。

僕自身、それを十分すぎるほど経験してきたのだ。

そして僕がクルミに対して感じた危惧は
業界に踏み込んでいくことだけではなかった。

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The Outcasts(読切り短編)11~20 |

The Outcasts・19-3

いつものように彼女が遊んでいると、
以前来た連れの男が店にやって来た。

最初は今日だけという話だったが、
入れないわけにもいかない。
連れは店に入ると、
彼女の席に行ってドスの利いた声で言った。

「お前、こんなとこで何やってんだ。
今日は出かけるって言ったじゃねぇか。帰るぞ」

彼女は臆することも無く言い返す。

「何であたしが付いてかなきゃいけないのよ。
勝手に行けばいいでしょ。
あたしはここで遊んでるんだから」

男は怒りを抑えた口調で尚も言う。

「いいから行くぞ。あんま舐めた口利いてんなよ」

それでも彼女は全く怯む様子は無い。

「勝負してる最中に話しかけないでよ。
だいたいここはあんたが出入りするようなとこじゃないんだから。
出てきなさいよ」

ついに連れの男の血相が変わる。
極道は人前で恥をかかされるのを何より嫌うのだ。

「んだと、こら。誰に言ってんだ」

「あんたに言ってんの。
勝負してるんだから話しかけないでよ」

そのやり取りを聞きながら
僕は従業員に急いで指示を出す。

男が彼女に手を出しそうになったら、
すぐに止めに入ること。
この場合、男が従業員に手を出すことはまず無い。

痴話喧嘩で他人に迷惑をかけるのも、
極道にとってはみっともない話だからだ。
ただし彼女に腕ずくで物を言うことは十分に考えられるし、
店としてはそれは避けたい。

場合によっては
やはりケツ持ちを呼ぶことも考えておかなければならない。
僕は急いで事務所に戻り、
モニターで様子を見ながら、
ケツ持ちにもしかしたら来てもらうかもしれないとだけ
連絡を入れる。初動が肝心なのだ。

男と彼女はしばらくやりあっていたが、
やがて彼女が席を立つ。
チップや荷物はそのままだ。
連れの男の手を引いて、店の外に出る。
やはり店や他の客の手前を考えたのだろうか。

店の外の階段の踊り場で、
二人は尚も言い合いを続ける。

客には分からないが
階段にも隠しカメラが仕掛けてあって、
モニタリングできるのだ。

もちろん声は聞こえないが、
唇の動きからすると
激しい言い合いなのは十分に伝わってくる。
インカムで従業員からも連絡が入る。

「かおりママ、”殺すんなら殺しなさいよ”
とか言いながら出ていきましたよ」

いつ手が出るか、僕は画面を注視しながら様子を見守る。
極道がこのケースで折れることはまず無いのだ。
警察沙汰にはならないだろうが、
救急車を呼ぶようなことにはなるかもしれない。
ところがその時、彼女は予想外の行動を取ったのだ。

彼女は、言い争うのを一旦やめてうつむいた。
次の瞬間、拳を握り締めながら立つ男の首に、
腕を回し抱きついたのだ。

そして唇を重ねる。

僕は呆然としながらモニターを見つめていた。
その男も微動だにしなかった。

おそらくは僕と同じように
呆然としていたのではないだろうか。
何がどうなってそういう行動につながるのか。

どれくらい彼女はキスをしていただろうか。
首に回していた腕をほどいた時、
そこに流れていた空気は、
先ほどまでの険悪なものではなかった。

彼女は微笑みながら店内に戻り、
進行中のシュートに加わり、
そのシュートが終わると
チップをアウトしてにこやかに帰っていった。

連れの男はその間、一言もしゃべらなかったらしい。
モニターで見ている僕には、
魂を抜かれたような表情しか写らなかったが。

「参ったね」

一人で呟く。
博打のことならともかく、
男女の機微には僕は到底通じそうも無い。

多分一生、盆暗のままなんだろう。

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The Outcasts・19-2

一口に水商売の女性と言うが、タイプはいろいろいる。

フェミニンな雰囲気を醸し出している
(悪く言えば常に作っている)タイプもいれば、
気風のいい姉御肌の女性もいる。

ギャンブルに嵌る女性には後者が多いのだが、
彼女も間違いなくそうだった。

尋ねたことは無かったが、
ヤンキー上がりだったのではないだろうか。
どこかにスイッチがあって、そこを押すと突然熱くなる。
逆鱗というやつかもしれない。

博打の場面では決断が早く、ベットがスパッと出てくる。
その分、人に目印にされやすい。
そしてそういう行為をひどく嫌い、熱くなって大敗するのだ。

要は何事においても
「自分の美意識に沿うかどうか」を重視するのだ。

女々しい行為を嫌い、
勝ち負けよりも気分良く遊べたかに拘る。
そんなタイプの女性だった。

負けて笑って「じゃ、またね」と帰ることもあれば、
勝ってるのに隣の客や従業員に
「勝負の最中に話しかけないでよ」
と啖呵を切るような光景も何度となく目にした。

そういった振る舞いを見るにつけ、
僕はある危惧を抱くようになった。
この手の女性は極道とのつながりが非常に多いのは
最初から分かっていたことだが、
あまりに負けが込むと、
ひょっとしたら最後は出てくるかもしれない。

男のシノギでは追いつかなくなるだろうし、
男の言うことを素直に聞くようなタイプでもない。

間違いなく器の大きな男を好むタイプであろう彼女は、
男に指図されることを嫌がるはずなのだ。
であれば、行き着く先は揉め事しかない。
彼女と男の。そしてそれから派生する男と店との。

とは言え今更どうすることもできない。
一度受けてしまった以上、ここまで常連になった以上、
その日が来るまでとことん受けていくしかないのだ。

そんな僕の心配をよそに、
彼女は来店頻度を上げていった。
他の店に行くことはほとんど無くなっていたのだ。

「なんかこの店に来ちゃうんだよね」

従業員ともすっかり親しくなった彼女は、
そんなことを言いながら遊んでいた。

「かおりママ」用のスリッパや膝掛けなども
既にその頃は用意されていた。
そうするように僕が指示したのだ。
営業に来いとも言わない彼女に、
店としての誠意を示すのは、それくらいしかない。

そんなある日、彼女が連れを連れてきたのだ。
連れは男で、僕が危惧した通り、
事務所のモニターから見ただけで、
堅気ではない雰囲気を漂わせていた。

「まずい」

僕は事務所でモニターを見ながら呟いた。

その日が来たのか。
あるいは単に一緒に博打を打ちに来たのか。

いずれにしても、ケツ持ちを頼むような事態になるかもしれない。
インカムで現場に連絡を取る。

「かおりママのお連れの人、何も言って来てない?
絶対打たせないで。打つって言い出したらすぐ呼んで」

僕がそう言うと、現場が暢気そうに言う。

「あ、お連れさん、打たないって言ってます。
ソファでおとなしく新聞読んでます」

それを聞いて一安心しながら、
店に行き彼女に挨拶をする。
彼女は僕に笑いながら言った。

「あ、うちの連れ、今日だけだから。心配しないで」

そこまで言われてしまったら、
こちらとしてはもうどうすることもできない。
ソファに極道風の男がどっかり座っている風景は、
他の客にも従業員にも
決して居心地の良いものでは無いだろうが、
一日だけと言って連れてきた人間を
つまみ出すわけにはいかない。

2時間ほど遊んだ後で二人は帰っていき、
その日はそれで終わった。
それからは彼女は今までのように一人で来店し、
勝ったり負けたりを繰り返しながら、遊ぶ日々だった。

ところがある日、事件は起こった。


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