The Outcasts・30-5
「で、どんな張り方してたの?」
僕は、ミズタニに尋ねた。
もちろん僕も、カジノの世界で長いことやってきているわけだから
ガジリの基本的なやり方は知っているのだけれど
その使い分けには少し興味があった。
「Nみたいにミニマムが$50ならベットの基本は$70前後でしたね。
10回に1,2回は張らずにルックします。
それでたまに1点ちょっと張るようにすれば、まず断られないです。
サービスの額とバカラの控除率1・2%を考えたら、
平均ベットを$80くらいまで上げても期待値は十分プラスでしょ。
ケチって断られては何にもならないですからね。
で、2シュートやったら、勝ってても負けててもアウトです。
まぁ滅多に負けませんけど、たまに負けることはあります。
控除率を超えないように打つわけですから
長い目で見れば絶対に勝てるんですが
その日その日で見れば負けることだってありますよね。
で、渋谷だったらそのままZに向かってました。
Zはサービスは20点で2点だったんですけど
サイコロ振って最大1点まで当たるイベントやってましたね。
8デッキを1シュートやればいいってのもこっちは楽でした。
その方があちこちの店を早く回れますから。
でもZはガジリ多かったですね。
それもかなり露骨なのが。
店のシステムが悪いのか、世の中が世知辛くなってるのか
ちょっとおれらには分かりませんけど。
ヘタクソなガジリってのは大体グループなんです。
理由は複数で来れば、キャッチボールできますからね」
キャッチボールというのはガジリ方の初歩で
二人組み以上でプレーヤーとバンカーに同額ベットする。
プレーヤーが勝てば、張っていないのと同じ状態でベットをしたことになるし
バンカーが勝っても5%のバンカーコミッションだけで済む。
ガジリというのはとにかく賭けてはダメなのだ。
そうやって賭けているふりをして
平均ベットを店の人間に分からないように下げようとするわけだ。
もちろんルックと言って、ベットをせずに一回流すこともする。
ただし、こっちもそんな手口は知っているので
よっぽどうまくやらないとあっという間にばれる。
ばれればその日だけで来店お断り、ということになる。
出入り禁止にはしないけれど、サービスの提供を断るのだ。
それだけでガジリは来なくなる。
「それで、ノルマとかは作ってたの?」
僕はさらにミズタニに訊いた。
人によるのだろうけれど、5軒必ず回るタイプと
一定額勝ったらその時点でその日は終わり、というタイプがいるらしく
僕はミズタニがどちらのタイプか尋ねたわけだ。
「ああ、一応5万勝ったら終了ってことにしてました。
ガジリ生活を始めてしばらくは、最低4軒必ず回ってたんですが
たとえば最初の2軒で目標額勝っちゃうと
気が緩んでその後負けることが多くて。
根が博打好きでしょ、ついその頃の気分に戻っちゃうんですね。
だから目標達成したらその時点で終わってました。
そしたら後は飲みに行ったりダラダラしたりでしたね」
気楽そうに見えるけれど、
先が見えないのは僕らと同じだ。
罪名こそ違えど、摘発されればやはり逮捕はされる。
ミズタニは、ガジリをどんな理由で止めたのだろうか。
「で、何でやめたの?どっかでパクられた?」
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